2021.06.03

河川工事は経験工学

投稿者まだ使える杵柄

河川工事は歴史が古いため、道路工事より経験工学の色合いが強いと言われます。

近年、地球温暖化などの影響による豪雨が頻発し、毎年のように洪水による大規模災害が発生しています。インフラ整備だけでは人命、財産を守れる状況ではなくなってきています。コロナもそうですが、自然には勝てないので、如何に共存していくのかという方向で考えなければと思う今日この頃です。

さて、河川工事の話ですが、平成5年頃、水門築造工事に2年半従事していました。堤防を開削し既設の樋管撤去、国道切り回しも付帯する工事でした。河川工事は初めての経験で、役所の担当者や会社の先輩にいろいろ教えていただきながらの現場管理でした。

河川工事は歴史が古いため道路工事より経験工学の色合いが強いと言われます。そのためか建設省内での河川組と道路組の人事交流はあまりなく、力関係(出世)も河川組の方が強いというようなことを当時お聞きしました。河川組の中でも“技術は盗め”みたいな感じで、手取り足取り教えるということはなく、苦労したと、私と同い年の役所の担当者がこぼしていました。

型枠の準備に取り掛るタイミングで台風が発生し、現場内冠水が予想されました。

その水門工事での出来事を1つお披露目いたします。
河川工事なので基本的には、非出水期に施工しますが工期の長い大規模工事だと出水期にも施工せざるを得ません。水門の底版(H=2.5m)の配筋が完了し、型枠の準備に取り掛るタイミングで台風が発生し、現場内冠水が予想されました。底版部分は鋼矢板で締め切り土留めを行っていたので、河川水が流れ込むと当然、大量の泥も流れ込み、最悪の場合、鉄筋の組み直しも危惧されました。対策として行ったのが、事前に締め切り内を水で満たして、外部からの泥水の流入を極力減らすということでした。

結果的には、現場は冠水しましたが、この対策が功を奏して、排水後にハイウォッシャーで清掃する程度で手戻りもなく、次工程へ進めることができました。当時の現場所長の経験のなせる技でした。

この経験をいまだに活かす機会がないことが何よりなのは、言うまでもありませんが。

一覧に戻る