2022.01.26

トンネル工事は土木屋のロマン?

投稿者まだ使える杵柄

トンネル工事は経験工学

もう20年以上前の話になりますが、新幹線延伸のトンネル工事に3年半ほど従事したことがありました。

それまでは、道路構造物、下水処理場、水門などの構造物がメインでしたので、土木技術者としては、トンネル工事を一度は経験してみたいという気持ち(土木屋のロマン?)がありました。

以前、河川工事は経験工学というお話をしましたが、トンネル工事は経験工学の色合いがもっと強いです。

したがって、当初は右も左もわからない状態でしたが、トンネル工事の経験が豊富な先輩が言うには、「通常の土木工事と同じだよ」でした。

やっぱり一般土木とは違う

しかし、この現場は発破掘削から始まり、機械掘削あり、破砕帯あり、土被り1D区間200m以上ありの結構な難工事ということもあって、3年半後に思ったのは、「やっぱり一般土木とは違う」ということでした。

火薬の管理では神経をすり減らし、山の悪い個所では、山を落とさないこと、天端の沈下や脚部の沈下を如何に抑えるか試行錯誤を行い、貫通するまで気の抜けることはありませんでした。

工事全般に言えることですが、トラブルがなければ儲かります。トンネルでは無普請(支保工なし)で施工できる固いしっかりした山ほど儲かります。余掘りが多く覆工コンクリートが多少食い込んでも、とにかく早く掘進できれば万々歳です。

トラブルもなく、楽で儲かる現場の真実

何故かというと、トンネル工事は機械設備のリース料が非常に高額だからです。作業班も昼夜2交代で行います。坑夫は昼の方、夜の方でそれぞれ出来高を競うように作業を行います。給料日にはお札を縦に立てられたこともあるという坑夫もいました。(これも、男のロマン?)必然的に、機械の扱い方が粗雑になりがちですが、故障すると作業中断になるため、加減が難しいところです。

天然記念物のニホンカモシカがトンネルに迷い込んだこともあったり、それこそ山あり谷ありの現場でしたが、何とか無事故無災害で貫通できたことは良い経験でした。トラブルもなく、楽で儲かる現場は一般的には良い現場ですが、皮肉なことに苦労がないと土木技術者としての技量は上がりません。残念!

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